子育力と地域力(タウンニュース紙上企画第7回)

弁護士は色々な仕事を行いますが,その中で子どもと接する機会はそれほど多くありません。
通常の法律相談では,相談はほとんど成人の方が相手となります。
少年事件において,付添人活動などをする時くらいでしょうか。
もっとも,子どもの存在を考えなければならない場面はしばしばあります。
例えば離婚の相談において,養育費の支払いなどを考える場合などです。
また私は,弁護士会の委員会活動で,こどもの権利委員会というところに所属していることもあり,
学校でのいじめの問題などにも関わる機会があり,色々と考えることがあります。

皆さんは街を歩いているとき,子どもの姿を見かけることがどのくらいありますか。
少子高齢化問題が叫ばれ続けて長いこと経ちますが,一向に改善される気配がありません。
出生率は1.3~1.4台と低迷し,年間の出生数も100万人を割り込むかというところまできております。
それにも関わらず,いわゆる待機児童問題やマタハラなどが横行し,子育ての環境はあまり芳しいものではありまijime_boyせん。
また,児童虐待やいじめなど,子どもの尊厳が脅かされるような事態もしばしば起きております。
このような子どもの人権が脅かされるような状況はなぜ起こるのでしょうか。
そして,それに対して,どう対処していけばいいのでしょうか。

いじめについては,いじめ防止対策推進法という法律が制定されております。
その法律上,「いじめ」という定義を広げ,被害者目線で心身で苦痛を感じるかどうかを判断材料としております。
これにより,できるかぎり支援の手を広げるという方向で動いております。
もっとも,人と人が関わり合う中でいざこざは必然的に生じうるもので,それは子どもの世界でも変わりません。
それが致命的なものにならないようにすることが重要になります。
そのためには,対処療法的に処置するのはもちろん必要なことですが,
より根本的な理由を見据えて環境的な対処をすることが肝要です。

family_big子どもの世界の歪みは,大人の世界を反映しがちです。
その反映の仕方は,育児や教育によって伝達されていくという経路があります。
どのような教育や育児がなされるべきか,ということについては争いがあるところですが,
基本にあるべきなのが,子ども自身の尊厳が尊重され,また,学習する権利が保障されるべきということです。
そのために試行錯誤しながら,もしくは良きモデルを見習いつつ,子を育てていくことになるべきです。
試行錯誤するためには,時間やパワーが必要です。
その余力を生み出すため,ワークライフバランスが取れるよう,労働環境が改善されるべきなのです。
また,そのような良きモデルに巡り合えるかについては周囲の環境も重要な要素です。
子どもが育まれるのは地域の中です。
そのような地域の健全な発展,人と人とのつながりが密になることが,遠回りのようでも確かな道となるはずです。

 

 

 

 

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