(バナジー/デュロフ「貧乏人の経済学-もういちど貧困問題を根っこから考える」を読んで)

先日,大きな国政選挙がありました。senkyo_touhyou
皆さんは,投票においてどのような視点から投票先を選びましたか。
それとも,投票なんて行っていないという方もいるかもしれません。
自分一人の一票なんてどうせ大勢に影響ないだろう,どうせ関係ないし・・・
そう思う人にこそ伝えたいお話があります。

 経済学の中に,貧しい国についてを研究する開発経済学という分野があります。
その中で,途上国の援助に関しては,大きく2つの流れがあると言われております。
一つは,貧しさから脱出するためには初期投資が必要であり,積極的に援助をすべきという考え方,
もう一つは,人々のやる気をそいでしまうので,あまり援助はすべきでないという考え方です。
これに対して,近年出された一般向けの本,「貧乏人の経済学」では,全く異なるアプローチをしています。
筆者らは,大上段からの立論によるよりは,
まず具体的な問題とその個別の答えを考えること有益だと述べます。

そのための方法として,事例毎に実証的な社会実験を行い,
その結果に基づいて,興味深い議論を展開していきます。

例えば,飢えている人も,値段の安さや栄養価のある食べ物より,美味しいものや携帯電話を買うことが。
また,教育についても,学校が与えられても,子供や親の側が学校へ行かせることを諦めてしまうことがあると指摘します。

keizai_hinkonsou 筆者らは,貧困についてこう言います。
「未来があるのだという発想こそが,貧乏な人と中流階級との差なのかもしれません。」
「希望の喪失と,楽な出口なんかないのだという感覚があると,坂道をまた上ろうとするのに必要な自制心を持つのはそれだけ困難になります。」

自分の心の持ちようにより,そのような困難から抜け出す道自体が見えなくなってしまうこともあるのです。
ある程度の初期投資が無ければ事業自体を起こせないなど「貧困の罠」という制度的問題が存在する場合ももちろんありますが,
環境に影響されて,脱出を諦めるという心理状態になることで更に脱出が困難になるのです。
どこかでその悪循環を断ち切らなければなりません。

そのためには,まず知ることです。
困難を脱するための良い制度があったとしても,その有効性を理解しなければ,
そもそも知っていなければどうしようもありません。

具体的にどのような方途があるかを知るためには,その道に詳しい専門家を通じることが一番の近道です。
例えば,緊急で金銭が困っているときには,地域の社会福祉協議会が「生活福祉資金」という形で貸付が利用できるかもしれません。
金銭的に困窮する人が訴訟をするときには,国が設置した法テラスという組織から援助を受けられるかもしれません。
そのような法テラスは,例えば私のような契約をしている弁護士を通じても利用することが可能です。
そのような様々な制度を知るの入り口の一つとして,弁護士に法律相談をすることが有用です。
知ることにより,道は開けることもあるのです。

さて冒頭に翻って,現代社会においては,社会内分業が高度化しており,
個々の職種毎にそれぞれ専門の仕事をしております。rounyakunannyo2

政治においては,間接民主制が原則となっており,政治家が政治を行うのが通常です。
そうだとすると政治の専門家である政治家に任せきりにしていればいいのでしょうか。
しかし,政策立案者や専門家らは,惰性,無知,
イデオロギーなどの誘惑により
そのパフォーマンスが落ちることがままあります。

そのような悪習を防ぐためには,外部からの働きかけ,監視が不可欠なのです。
選挙をそのようなものと考えれば,
一人でも多くの人が投票に行くことこそ,
政治の堕落を防ぐことにつながり,

ひいては自分や身の回りの社会が少しずつ変わっていくことにもなるのです。