仮想通貨と自己破産
先日,ビットコインが記録的な大暴落をしました。
中国などでの規制の動きが原因ということのようです。
そもそもビットコインとは何かといいますと,ピア・トゥ・ピアというインターネット通信方式を利用した仮想通貨です。また,中央銀行などの国の信用を背景としない貨幣ということでも非常に注目されております。従来的な見解からは,通貨として流通するか疑問の声も出ておりますが, 通貨とは何かという核心に迫る意味でも,情報化社会における注目すべき試みと言えます。
このような本来的な役割以外にも,価格が変動する以上,その上下の差から利益を得るために「投機」の対象にもなっております。今回,暴落を引き起こしたのも,このような投機目的の資金が大量に流入したことが理由になっていると思われます。このような投機資金については,短期的な利幅から利益を得るのが目的としている関係上,下落が下落の呼び水となる群集心理(情報カスケード)が起きやすく,価格が乱高下しがちになります。
投機した商品が暴落したとき,現物取引であれば,所有している物が安くなるという損で済みますが,
購入するのに借金をしていて暴落により返せなくなった場合,いわゆるレバレッジ取引の場合などには,第三者に対して債務を背負うことになります。
このようにして負った債務について,自己破産をすることで免責,すなわち支払をしなくて良くなるかどうかは争いがあるところです。
なぜなら,自己破産をすると,原則として,不許可事由に当たらないならば,確実に免責されることになります。しかし,上記のような投機性のある取引の場合,「射幸行為」という不許可事由に該当する可能性があるからです。
これに該当するかは,資力,職業,知識などから判断されることになり,一概には断定できません。
もっとも,この「射幸行為」に当たるとなったとしても,裁判所が免責をしてもよいと判断した場合には,免責を受けることが可能になります。
また,仮に自己破産では駄目でも,民事再生等の別の手段により債務を圧縮することは可能です。
FX取引などにより多大な債務を負ったことに絶望して世を儚む方なども,諦めず専門家に相談することをお勧めします。
なお,以上のようなお話は,主に「投機」に付随して生じる出来事です。
「投資」とは,「投機」とは異なり,配当や金利,賃貸料など,かなり確実性の高い収入の形で利益を上げること,及び,長期間保有して値上がり益を得ることを目的とした金融資産の購入として定義されます(「ウォール街のランダム・ウォーカー」参照)。
何年あるいは何十年先まで安定的に配当をもたらし,あるいは持続的な値上がりが期待できるような金融資産を保持するということは,今後,年金制度の見通しが不透明であったり,金融不安によるインフレの危険性があったりするなど,我々の不確実な未来のためには必要不可欠であるのではないかと思います。